今日もこけしは彼を見守っている。

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  • ギフト。それは誰かからの贈り物。「何が喜ぶかな?」「あの人にはコレが似合いそう」と考える時間や気持ちもセットになって、私たちの元にやってきます。なんてありがたいのでしょう。

    しかし時としてその想いには、すれ違いが生じることがあります。今回は、妙なギフトを受け取ることになった3人のお話です。

    

    外科病棟のプリンちゃん

    歌手である彼女が脚をケガし入院したのは、その年のクリスマス。東京にも雪が降りそうな、とても寒い夜でした。そんな中、お見舞いに来た方の手土産が、プリン24個、シュークリーム8個。

     

    仲間や友だちが多い子だけど、ミュージシャンにとってかき入れ時の年末。そこまで多くの(直接の)訪問者はありません。

    自分で1つ、同室の5人に1つずつ。看護婦さん3人に1つずつ。訪問者3人に1つずつをお裾分けしても、残りはまだ12個。1ダースのプリン。

     

    生ものなので急いで配ろうにも、彼女はいま自足歩行できません。どうやら口コミで、病室には看護婦さんたちが代わる代わる来て、シュークリームを手に帰ったのだとか。きっと「プリンの子」「プリンちゃん」って呼ばれていたでしょうね。

    サ○リオキャラクターみたいでキュートですが、手土産は数量に注意しましょう。

     

    あなたのこけし

    彼が20代の頃、付き合っていた彼女とのお部屋デート。まるでセーターを渡すように、まるで前から欲しがっていたゲームソフトを差し出すように、

    「はい、プレゼント♡」と渡された誕生日プレゼント。

    「ありがとう!」包みを開けてみると、こけし。それも20cmと30cmの本格的な2体。

     

    「これはね、あなたの身代わりになって守ってくれるから!」

    彼女はこけしの必要性と素晴らしさを熱弁して、おうちの良き場所にセッティングして帰っていきました。

     

    その後どのように処分したのか聞いたところ…。まだ引き揚げてきた引っ越し段ボールの中に眠ったまま、10年以上の時を経たのだとか。今日も彼が元気に仕事をしていられるのは、きっとそのこけしのお陰だったんですね!

     

    あの年あのとき「3月9日」

    人を晒してばかりだとバチが当たりそうなので、最後に自分の思い出話でも。

     

    わたしがまだ、札幌で暮らす19歳だった頃。常連として通っていたカフェバーのバーテン杉田君とお付き合いをしていました。杉田君は26歳、デビューを夢見るバンドマン。未だかつて食べたことがないほどおいしい肉味噌炒飯と、ピザ屋のバイトで鍛えた一切ブレないセーフティドライブが特技です。

     

    ある日、カフェバー主催で60人ほどのイベントを開催するというので、わたしの母と妹、友だちも数人も連れて参加しました。ファッション・メイクショー、数々の料理と飲み物が次々提供される会場内は、アットホームでみんなの笑顔がこぼれるとってもHAPPYな場。誰しもがくつろいで過ごしていました。

     

    …と、そのときステージにスポットライトが。ギターを抱えた杉田君。

    「この曲を、大切なある人に贈ります…」

    もう嫌な予感しかしない。

    「流れる季節のまんな~かぁで~♪」

    わーわーわー。こちらにアイコンタクトがさく裂している。

     

    「瞳をとじ~ればあなたが~まぶたの裏にいることで~どれほど強くなれたでしょう~♪」

    みんな、わたしたちの関係知ってるから。その「ある人」絶対にわたしだから。しかもギタリストの彼。初めて聞く歌声があまりにも音痴で、わたしは気を失いそうです。ごめんなさい、わたしは…まぶたの裏にあなたではなく涙しか浮かびません。

     

    このようなサプライズの贈り物は、できれば2人だけで行いましょう。その後も関係が良好に運ぶと思いますよ。杉田君がその後バンドを諦めて、デリバリーの中華料理屋さんになったことを心からお祈りしています。

    では最後に、聞いてください。レミオロメンで「3月9日」。

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    TOMOMI

    TOMOMI

    日本酒ライター/コラムニスト/唎酒師。物語や記事の執筆、イベント企画など日本酒にまつわる様々な活動中。仕事も恋愛も0か100かの全力投球で、周りを困らせています。寒さに弱い北海道出身。

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